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エコツーリズムで地域を元気にしよう!地域で活躍する気になるメンバーの活動を紹介します。

大自然の宝庫「やんばる」で環境教育の可能性に挑む「やんばるエコツーリズム研究所」「サンゴとブロッコリーの森自然学校」代表 中根忍さん

青い海、鬱蒼と茂る原生林、ヤンバルクイナをはじめとする希少動植物。沖縄の北部のやんばる(山原)地方は、まさに大自然の宝庫である。しかし、この自然はもはや、守ろうとしなければ失われていくのが現状だ。そんなやんばるで、エコツアーを通して、自然保護と環境教育、ひいては地域活性化に取り組んでいるのが「やんばるエコツーリズム研究所」と「サンゴとブロッコリーの森自然学校」の代表、中根忍さんだ。やんばるに観光客がほとんどいなかった10年前からの活動の軌跡を語ってもらった。

 エコツアーとの出会いは1998年。当時私は観光の専門学校を退職し、やんばる(東村)に移住を始めたばかりでした。その年に日本エコツーリズム推進協議会(現日本エコツーリズム協会)が設立され、エコツーリズムに関わる人々と出会ったのです。
 当時は「エコツアー」「エコツーリズム」などという言葉は全く知られていませんでしたし、私自身もどのようなものか分かりませんでしたが、知れば知るほど、これはきっと、やんばるの環境保護や地域活性化に結びつくと考えるようになりました。そこで1999年に、当時住んでいた東村を拠点とした「東村エコツーリズム協会」を設立し、勉強会を開くなどしました。私個人としては「ホールアース自然学校沖縄事務所」の開設と「やんばるエコツーリズム研究所」を設立しました。その後、国頭村に居住を移し、「サンゴとブロッコリーの森自然学校」を併設しました。現在はこの2つの団体を拠点として活動しています。


自然を汚すのは「恥ずかしい」という気持ちを引き出したい

「やんばるエコツーリズム研究所」の活動はどちらかというと観光寄り、「サンゴとブロッコリーの森自然学校」は環境教育寄りですが明確な区別はありません。「エコツーリズムの発展には環境教育が必要である」というのが私のポリシーですから、どちらにも環境教育は欠かせません。 森林のトレッキング、キャンプ、カヤッキング、マングローブの観察などがおもな活動です。美しい自然を見て、楽しんでもらうのはもちろんですが、上手く環境教育を取り込むようにしています。例えば、海辺にゴミがたくさん漂着していることについて、もし自分の知り合いの外国人にこの状況を見せることになったらどう思うか、問いかけてみます。ここで、「恥ずかしい」という気持ちを引き出したいのです。
 ウミガメの産卵場所の観察もします。100〜120個の卵から、産卵するまでに大きくなるのは、1〜3匹程度なのです。それが海に浮いているビニール袋などのゴミを誤飲してしまうことが多く、産卵する浜を目の前にして死んでしまうのです。たった1〜3匹しか戻って来ない現実に、子ども達は心から悲しみます。そして、自然を汚すことを恥ずかしいと思う。自然体験を通してこうした「気付き」がいくつかあるようにツアーを構成しています。

エコツアーの参加人数は最小限に。多すぎると自然と人間のストレスに

 地域の人に認められるようになるまで、それは大変でしたよ。はじめの頃は、圧力団体なんじゃないかとか、かなり怪しい目で見られていましたから(笑)。田舎ですから、知らない人に対して警戒心が強いですし、10年前にはエコツアーどころか、観光客さえほとんどいない状況でしたから「あの人達は何をしようとしているのだろう。地域のためになるのだろうか」といぶかしがられました。
 ところが、私たちがエコツアーを始めて、その収益の一部を協力金として地域に還元するようになると、徐々に理解されるようになりました。やはり、目に見える形で活動の成果を示さないと信用してもらえないのですね。理念だけ掲げていても、信用も賛同も得られないってことが分かりました。現在もツアー代に環境保全費が含まれており、参加者1人につき200円をツアーを展開する地域に払っています。 
 今では、地域の方々の志も高くなって、団結してやんばるの自然を守ろう、地域活性を目指そうという気持ちが高まってきました。例えば、私たちが拠点としている国頭(くにがみ)村安田(あだ)地区は、ヤンバルクイナなどの希少動植物が危機に瀕していることを受けて、その原因の1つである野良猫対策のために自主条例を設けました。猫が捨てられても、どこの家で飼われていたか分かるように、全国に先駆けてマイクロチップの装着や去勢、避妊手術を行いました。ヤンバルクイナの郷作りを目指して、考えているだけでなく、行動をおこしたことは、全国的にもモデルとなる事例ではないかと自負しています。
 こうした活動は単に動植物の保護を目指している訳ではないんですね。ヤンバルクイナなどの天然記念物や豊かな自然は、地域を活性化させるための資源であり、宝物だと思っています。ですから、自然保護ありきではなくて、私たち人間が豊かに暮らすために、自然保護は欠かせないものであり、地域活性化のシンボルなのです。

エコツアーの参加人数は最小限に。多すぎると自然と人間のストレスに

 エコツアーは多少なりとも自然に負荷をかけますから、やはりジレンマはありますよ。自然学校を設立した当初、ツアー客の受け入れを頼まれ、20名までならとお伝えしたのですが、50名ぐらいを一度に引き受けてくれませんかと頼まれましたがお断りしたことがあります。それから時が経つにつれ、自分が思うエコツアーの最大催行人数はさらに減ってきて、伊部岳のトレッキングなどは今では6人程度。これ以上多いと、私の声が全員に届かないし、安全管理もままならない。なにより動物は影を潜めてしまうのです。姿も見えなければ、鳴き声も聞こえない。大人数だと動物にストレスがかかるから。それにお客さんも納得できないでしょ、せっかく山に入ったのに。お互いにストレスでしょ。自然へのストレスも、参加者へのストレスも最小にしたい。こう考えると、催行人数はおのずと見えてきますね。

学校や家庭レベルでの環境教育が必要。そのための指導者養成講習も開催

 おかげさまで、参加者の方には喜んでもらっているようで、5回、6回と同じツアーに来てくれる人もいまして、ありがたいですよ。「もう話すことないよ」って言うのですけどねえ(笑)。それから、自然を活用する以上、環境教育は、絶対に必要だと思いますが、私の力は限られていますからね。だから学校や家庭レベルでも環境教育がなされるべきだと思うのです。そのために、環境教育のPW(プロジェクトワイルド)の指導者養成、自然体験活動リーダー養成も行っています。最近は知名度も上がり、参加者が増えてきました。

今後はもっと指導者が増えて、もっと環境教育が身近なものになるようにしたいですね。打ち上げ花火みたいに、はじめたら「ドーン」と一斉に広がってくれればいいのですが、そうはいなかないですからね。一歩一歩、自分ができることを地道に頑張っていくしかないですよ。


中根忍(なかねしのぶ)さん

沖縄県コザ市(現、沖縄市)生まれ。ホテルマンから観光専門学校を経て、現在に至る。1998年 東村エコツーリズム協会設立・初代会長となる一方、やんばるエコツーリズム研究所を設立する。現在、国頭村安田に拠点を移し、やんばるの海・山・川で活動中。

中根忍さん