エコツアー・ドット・ジェイピー









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オランダ留学通信

 第7回 

ホワイト島
クック船長が名付けた“白い”島へ上陸!

ホワイト島
upload:2005.10.3


「ホワイト島」キャプテン・クックが命名。蒸気に包まれて常に“白く”
見えていた事からその名がついたという。(1769年の航海日誌より)


 島に降り立つと、とても不思議な気分。
 こんな“惑星”にたどり着けるなんて、胸が高鳴りました。約11カ月を過ごした南島を離れ、北島へ。日本を旅立つ前から必ず行こうと決めていた離島のひとつ、ホワイト島。硫黄のにおいと白い蒸気の中に降り立ったのは、帰国8日前でした。


火山が爆発しても、自己責任!?

 当日は朝から大雨。イタリア人のフランチェスカと、「今日のツアーはもうだめね……」なんて朝からしんみり。とりあえず、ツアー会社の人が宿に迎えに来てくれましたが、ツアー催行はまだ未定とのこと。
 でも到着すると手続きを始めている人でいっぱい。よし! 二人で大はしゃぎです!
 手続きの際に“誓約書”にサインをしました。「万が一、火山が爆発しても全て自己責任とする」乱暴に要約するとこういう内容でした。そうです、ホワイト島はニュージーランドで最も活動の激しい活火山! 今日は、その火山を歩くエコツアーです。

 ホワイト島へは、北島のファカタネという小さな町が起点になっています。9時半頃、ツアー会社に隣接した船着場から出発。島までは、高速船で約1時間半。岸から約50kmに位置しています。まだ小雨がぱらつき、雲はどんより。島に行くのにこんな天気じゃ台無し……。気分は乗らなかったのです。ツアーを明日に変更したい気持ちでいっぱいでしたが、私にはもう一日でもずらす余裕はなかったのです。
 でも、やっぱり“島”は私にとって特別。島に渡るときのあのドキドキは、ニュージーランドの陸地が見えた瞬間に飛行機の座席で涙が出た感動とも比べられない。

 高速船には、30人ほど乗船していました。ガイドは3人。トム、マット、リエン。船内ではヘルメットと防毒マスクを受け取り、ファカタネや島の歴史などを船内放送で聞きました。その間、スープとパンがふるまわれました。寒かったのでおいしかった。
 ここのエコツアーは、1999年から3年間連続で「エコツーリズム賞」大賞を受賞しただけあって、船内も快適。生態系に配慮した汚水システムが設置されていたり、船内の備品はできる限り実用的で環境に優しいものを使うなど、ツアー環境全体のレベルが高いものでした。
 この頃には、英語もかなり聞き取れるようにはなっていましたが、ガイドの説明よりも、火山に上陸するということで興奮しっぱなしでした。ふと気付くと、陸から遠く離れていました。そのとき、海面になんとも言えないかわいい頭を発見! 首を高く持ち上げ、オットセイが目をくるくるさせていました。その他、頭に長い角を持つ魚(一角!?)も間近で見ました。幸運なら、イルカやクジラも楽しめます。


轟音が響く“惑星”

 島に近づくにつれてどんどん空が青くなり、間近に見えた頃には快晴の青い空が出迎えてくれました。その中に白く浮かぶ島。クック船長の表現はピッタリ! ちなみに、彼はこの島が火山だと気付く程近づかなかったようなので、気付いていたら、今頃は歴史が変わっていたかも。島の大半がはげ山で、周囲に若干の緑が見える程度。土壌などの酸性が強く、植物が育たないそうです。緑たちにとっても厳しい環境のようです。


若干の緑が島を引き立たせている。
白く見えるのはガーネット(シロカツオドリ)の営巣地。



小さな波止場の周りは、島から流れ出た土砂などでにごっている。


 高速船は、島から少し離れた所に停泊し、そこからはボートで島に移動。小さな波止場のようなものが設置されていましたが、そこからは岩だらけの足元の不安定な場所を歩きます。いよいよ上陸です。

 島は予想以上に“惑星”でした。圧倒される気持ちと同時に、何か神聖な気持ちにもなります。ここからは2つのグループに分かれて行動します。最初にガイドから説明や注意点を受け、今は有毒なガスが出ていないのでマスクをする必要はないが、すぐにできるように首に掛けておくように、とのことです。
 あちこちから轟音が聞こえ、目の前では今にも噴き出しそうな地面を歩く。硫黄の臭いが温泉を思い出させ、なんか懐かしい気分にひたってしまいます。いたる所から水蒸気が上がっているのですが、これは海水ではなく雨水というから驚きです。この島は特別な構造になっており、火山の噴気孔は海抜より低いにもかかわらず、密閉されているため海水が入らないようなっているといいます。雨も多いのかなあ。
 我がふるさと九州にも“阿蘇”という世界一のカルデラをもつ活火山がありますが、ホワイト島ではまさに火口の中を歩いている感じで、興奮度も高い! しかも、全く手が付けられていないために、“惑星”感が高まっているのだと思う。


上陸したばかり、各自、思いにふける。
手前の錆びた物体は、硫黄採掘時代の忘れ物。



歩くのは、ツアー客の残した足跡でできた一本のトレイル。
これも島の保存を意識しての行動。



ホワイト島の硫黄は高品質で、50%〜90%の純粋な硫黄が含まれる鉱石だという。


 硫黄に混じって色とりどりの岩石の粒が足元に広がっている。何万年も前には大きな岩だったかもしれない。島は、すり鉢の一部が開けているような形状となっていて、波止場が設置されている方向から火口までは、少し登っていく。
 現在の火口は、ミルキーブルーのきれいな色が人を魅了する感じ。ここでガイドさんが一言。「その昔、この火口の前に靴だけが揃えておいてあったんだ。持ち主の骨さえ見つからなかったんだよ」ということは……。



硫黄を含んだ砂たち。



現在の最大の火口。火口はどんどん移動し、周りに昔の火口跡も見られる。



もう一つの火口、「ドナルド・ダック火口」なんでそういう名前なのか不思議。


 
 私たちはさまざまな国から集まり、この惑星の上で時間を共有する機会に、改めて感動を覚えていました。
 そんなとき、ガイドから小さな流れの水をなめるように言われ、各自不安そうにチャレンジ。この味はとても言葉で表現できませんが、とにかく鉄くさかったのを思い出します。「飲みすぎるとお腹をこわすので気を付けて」とガイドから。いやー、とてもゴクゴク飲めるような代物ではありません。



波止場の方向へ歩く。みんなどんな思いで火山に来たのだろう。



惑星の中にいるのが、分かるでしょう!



流れる水を不安そうになめるみんな。五感を使う体験は、忘れることができない。


 いよいよ島の歴史を物語る大事な場所へやってきました。遠い昔の硫黄採掘の工場跡ですが、これがまた不思議な雰囲気を醸し出しています。今では雑誌のモデル撮影などでも使われています。昔の労働者たちは、こんな風になるとは、想像もできなかったでしょう。
 



島の内側から波止場の方を臨む。今では土砂などに埋もれた硫黄採掘の工場跡。



フランチェスカ。これは、どういう行程で使われていたのかしら?


火山を“所有”し、美しさを伝えたい

 島の年齢は10万歳〜20万歳と推定されていますが、下の写真の看板が立つまで、硫黄の採掘などを巡って、長くて重い歴史がありました。今では看板に載っているバトル家トラストによって所有され、保護されています。硫黄の採掘が始まったのは1885年。当初は、硫黄は肥料用として採掘されていました。島は何人もの手に渡りましたが、その度に硫黄の採掘や爆発による災害などを繰り返し、ときには数年間もほったらかしにされ、最終的に1936年にバトル家が所有したのです。それまでの所有者とは全く異なり、ジョージ・レイモンド・バトル氏は次のようは言葉を残しています。
 「私はむしろ、火山を“所有する”という考えの方が好きだ。この島が持つ魅力を人々に伝えるという、一見不可能に思われることに挑戦したい。変だと思われるかもしれないが、この島は信じられないほど美しく、その美しさは筆舌に尽くしがたい。」



「ホワイト島 私有景観保存地」 看板で島の全形が想像できるでしょうか。


 それまでの所有者がいかに硫黄を採掘しようと苦戦してきたのとは全く逆の発想であり、当時としては非常に周りに驚かれる発言だったに違いありません。実際、バトル氏も島を調査し、 膨大な量の鉱物があることは分かっていたのに、それ以上、採掘を続ける選択はしなかったのです。彼は約70年も前に、まさにエコツーリズム概念の先端を進んでいたのですね。

 約1時間半の滞在時間でしたが、船に戻る時間となりました。何となくホッとします。波止場では、靴底をブラシで洗いました。島は酸性が強すぎるので、船や本土の植生を痛めないように、とのことでした。この辺の気遣いもすばらしいと思いました。
 船に戻るとランチタイムです。ランチボックスと飲み物が配られます。その間、ゆっくりと島の周囲を一周します。さまざまな方向から島を見ることができました。島の淵にわずかに残る緑の中に、白くて上品なシロカツオドリたちが休んでいます。火山の上にいるとは思えない様子で……。



目の前で見た唯一の植物、アイス・プラント。
過酷な酸性の環境で生きる植物はほとんどいないが、この植物は酸性を好む。



靴底を洗う参加者。



NZではマシなランチボックスでした・・・。
チョコレートのような包みは、NZ人が超大好きな、ホキポキバー。


 島から少し離れて改めて島を見ると、バトル氏が残した言葉通り、すばらしく美しいホワイト島の姿を目にしたのでした。





***** Mainly FinePrices *****
*White Island Tours PEE JAY*
(URL:www.whiteisland.co.nz
料金:$126



from 天愛

もうお気づきかもしれませんが、実は昨年暮れにニュージーランドから帰国しています。今は「森林セラピー」に興味津々! 来月はドイツの黒い森を歩きに行くつもりなので、その報告もしたいと思っています。今後ともどうぞよろしく♪


みなみ てんあい プロフィール
1975年福岡市生まれ。幼少より空想好きな性格。地元で大学を卒業し、まずはホテルへ入社。広報とブライダルに携わる。が、不思議な縁でコンサル会社に転職し、2001年『九州のムラ』という本や人々と運命的な出会いをする。本の販売管理に九州のムラやマチを周る。エコツーリズムに興味をもち、また海外生活を経験したいという小さい頃からの夢の実現に(三十路を前にしての焦りも加担し)、退職してニュージーランドへ飛ぶ。
*『九州のムラ』はこちら


なぜニュージーランドに行くことに?
「九州のムラ」に出会って、エコツーリズムを知る。海外へ行きたいという何の目的もなかった夢に、「エコツーリズム」というキーワードを見出し、なぜか、アメリカとニュージーランドを比較。「同じ金額のお金を持って行くなら、ニュージーランドの方が長く滞在できる!」という安易な理由で、最終的には決定。また、その「小ささ」に惹かれた。

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