エコツアー・ドット・ジェイピー









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オランダ留学通信

 第5回 

ニュージーランドで最も美しい
「クイーン・シャーロット・トラック」を歩く

マールボロ・サウンズ海洋公園
2004年10月2日着信


ケネプル・サウンドを見ながら歩く。


 南島北東部のマールボロ・サウンズ(Marborough Sounds)海洋公園は、数多くの入江(Sound)や島々が見事な景観をつくる美しいところ。なかでも、「クイーン・シャーロット・トラック」は、半島の峰を歩く全長71kmのトレッキングコースで、最高地点は標高470mなのでとても歩きやすく、マウンテンバイクを利用することもできます。
 今回はケネプル・サウンドとクイーン・シャーロット・サウンドの2つの入江を両側に見ながらのトレッキングに行ってきました。

 冬も終わりを迎える8月末、クイーン・シャーロット・トラック(Queen Charlotte Sound Track)にフラットメイト(同じ家に住む人)のアナと向かいました。
 まずはピクトン(Picton)へ。私達が住んでいるブレナム(Blenheim)から車で30分、北島南部に位置するこの小さな港町は、NZの首都ウェリントンまでのフェリーが出ていることもあり、ちょっとしたにぎわいがあります。ピクトンからは水上タクシーを利用し、私達のスタート地点であるキャンプコーブ(Camp cove、cove=小港)まで移動。トラック上にはいくつも波止場があり、水上タクシーで乗降ができます。湾内には時々イルカが遊びに来ると聞いていたので、運転手には「見つけたら教えて!」と、あらかじめ声を掛けておきました。
 ピクトンを出発して何カ所かを立ち寄った後の、エンデバー入江(Endeavor Inlet)内でのこと。「Dolphins!」。イルカ達が私達のボートに気付くと後から追いかけて来て、ボート後部の波に乗って遊び始めました。ボトルノーズ・ドルフィン(Bottlenose  Dolphin)です。その名の通り、鼻先がボトルのようになっているイルカで、手で触れそうな所に何頭も近づいては離れ、近づいては離れ、そして少しづつ離れていきました。


エンデバー入江にて。ボートの波で遊ぶイルカたち。



徐々に遠ざかっていくイルカたち。また会おうね。


「リゾート」を横目に「バックパッカーズ」に宿泊

 午後3時ごろキャンプコーブに到着。波止場の目の前が今日の宿プンガコーブ ・リゾート(Punga Cove Resort)です。なだらかな丘に宿泊棟が何軒も建っていて、木性シダやカヅラで作られた手すりが「リゾート」の雰囲気を醸し出しています。でも私達はもちろん「リゾート」ではなく、併設された「バックパッカーズ」(簡易宿泊施設。通称BBH)に宿泊しました。BBHには私たち以外は2人だけ。オフシーズンのトレッキングは初めてでしたが、トラック上やBBHでほとんど人に会うことがなく、オンシーズンのトレッキングとかなり違う印象を受けました。
 到着直後、宿のオーナーが「入江にイルカが遊びに来てるから見に行こう!」とモーター付きのゴムボートで連れていってくれました。アナは「スイスには海はないし、野生のイルカなんて何度でも見たい!」と、興奮しっぱなし。イルカは私達を幸せに、そして穏やかにしてくれます。
 夕食前、空が夕焼けで真っ赤になりました。「これは明日快晴という意味よ!」とアナ。明日からのトレッキングに備え、ビールで乾杯してオヤスミナサイ。ちなみに部屋は4畳半ほどの狭さに、2段ベッドがクロスして置いてあるのです。寒かった!

 ここで、このトラックについて少しふれておきましょう。
 クイーン・シャーロット・トラックは、荷物を背負わずに歩けるルートです。もちろん他では、お金を払えばそういうサービスもありますが、ここでは水上タクシーの料金に荷物の運搬料金が含まれているため、荷物は先に宿に運んでおいてもらえるのです。水上タクシーが波止場まで運び、その後、宿の方が荷物の送迎をするという仕組みになっています(波止場から宿への荷物運搬料金は片道$3〜)。
 このトラックは、ジェームズ・クックが1770年代に100日過ごした基地シップコーブ(Ship Cove)から始めるのが一般的。今回私達は、キャンプコーブまでの約20kmは飛ばすことにしました。トラック上にはDOC(森林保護局)のHut(宿泊用の小屋)はなく、DOCのキャンプサイト(テントを張る場所)か民間の宿のみ。以前歩いたトラックではHutに泊まりましたが、寒さで眠れなかった……。でも今回は荷物を背負う必要はないし、毎日シャワーを浴びて、キッチンで夕食を準備することもできる。こんなトレッキングは初めてです。


空、山、海。すべてが調和した美しさ
トレッキング1日目(8月30日快晴)<Camp cove→Portage 24.5km>

 今日のコースはトラック上最長で、しかも一番美しいと言われています。午前9時出発。体は軽いものの、これだけの距離を1日で歩くのは始めてのことです。内心不安もありました。歩き始めは標高474mまで一気に上りだからです。でも予想していたほど困難ではなく、徐々に後方に海峡の景色がひろがっていくのを眺めるのは壮観です。後を振り返りつつ歩くトレッキングって、つくづくいいもんだなと思いました。

 2時間程でイートウェルズ(Eatwells)展望地に到着。ウェリントン方向には外洋も見え、島々が空の中に浮かんでいるように見えました。空の色、山の色、海の色、全てがお互いに調和していて優しいのです。



イートウェルズ展望地より北島方向を眺める。



クイーン・シャーロット・サウンド。ピクトンの町並みが奥に見える。



ケネプル・サウンド


 ベイ・オブ・メニー・コーブズ(Bay Of Many Coves)を過ぎたあたりから右手にケネプル・サウンド(Kenepuru Sound)、左手にクイーン・シャーロット・サウンドの2つの入江が見え始めます。
 「がさっ!」。大きめのウェカ(Weka。飛べない鳥で海外の旅行者にKIWIと間違われる)がやぶから飛び出し、私達を一瞬見ると、何事もなかったかのようにまたやぶに戻っていきました。
 午後3時頃ブラック・ロック・キャンプ(Black Rock Camp)へ到着。左方向にピクトンの白い町並みが小さく見えます。雪山もちらっと顔をのぞかせている。未だにできる靴擦れに足を浮かせて歩いていると、やっと5時半にポーテージ(Portage)に着きました。今日の宿は、ポーテージ・リゾート・ホテル(The Portage Resort Hotel)内のBBH。とてもきれいで居心地がよく、夕食後はベッドに倒れ込みました。


ケネブル・サウンドに大きな渦巻き発見
トレッキング2日目(8月31日快晴)<Portage→Te Mahia 7.5km>

 午前10時に出発。DOCの看板を通り過ぎると森のトンネルがあります。こういう小道は大好き! 違う世界への扉をくぐりぬける気分になるからです。
 足を進めると、ケネプル・サウンドに映りこむ山と空と雲。目を閉じても、目の前の風景が浮かび上がってくる美しさです。
 遠くを見渡すとカイコウラ(Kaikoura)方面の雪山が青い空に映えます。こういうのを心が透き通る風景というのかもしれません(カイコウラはピクトンから南に約160km、クライストチャーチから北に約180kmにある半島)。
 突然「ピーッッ」と、私を呼ぶ声がしました。周りを見回しても誰もいません。はっと上を見上げると、胸元の黄色が印象的な小鳥が私を見ていました。アイコンタクトをとると、あっというまに森の中に消えていきました。鳥に声を掛けられたのはこれが初めてではないけど、嬉しい出来事です。こういうことがあるからトレッキングはやめられないんだなー。
 それからまたしても不思議な光景を目にしました。ケネプル・サウンド側の海面に、コルー(シダの芽。渦巻き状の形。新生や始まりを意味する)の形が浮かび上がっていたのです。「私達とっても幸運ね!」。アナとずっとコルーを見続けました。



ケネプル・サウンドに浮かんだ大きな渦巻き「コルー」



ピクトン方面



ヒルトップ展望地にて。フラットメイトのアナと。


 昼食はヒルトップ(Hilltop)展望地で。メイントラックから10分ほど急な坂を登ると、そこは365度見渡せるパノラマの世界です。両海峡に歩いてきたトラック。そしれこれから歩くトラック。すべてが私達2人だけのものです。ここで“おにぎり"を食べたのは、嬉しい思い出。展望地を降りると、1時間ほどでテ・マヒア・リゾート(Te Mahia Resort)に到着。午後2時半です。
 最後の宿がこんなにかわいらしい所だとは驚きでした。宿はビーチ沿いにあり、内装がとても愛らしいつくりだったのです。

 今日は夜も楽しみでした。なぜなら、宿の目の前の小川でグロウワーム(土ボタル)が見られるからです。これは青い光を灯す虫で、蛍とは違って点滅せずにぼおっと光るのです。暗くなってから小川に出かけると、光っている! 少し遠くを見ると、たくさんの青い光がちりばめられ、青い氷のようでした。しばらく不思議な空間を楽しみ、宿に戻ってふと外を見ると、まあるい月が雲から顔をのぞかせていました。そういえば昨晩は満月。月をかぶった雲は一瞬ぱあっと光り、そして暗闇へと消えていきました。


テ・マヒア・リゾートのBBHの部屋



テ・マヒア・リゾート 前のビーチにて。
" DANKA, ANNA!"(ありがとう、アナ!)


雨天で中断したけれど……。
トレッキング3日目(9月1日嵐)<Te Mahia→Anakiwa 12.5km>

 普段はまったく当たることのないニュージーランドの天気予報がピタリと当たり、明け方から激しい雨です。今日のトレッキングはあきらめざるを得ません。昼過ぎまで宿でノンビリし、近くの波止場で水上タクシーを待って、ピクトンへと戻りました。
 途中で断念しましたが、悔しくはありません。ニュージーランドに来て、トレッキング好きの人たちが必ず口にしていたのがこのトラックの美しさ。その言葉を、今度は私が口にすることになるのでしょうから。


みなみ てんあい プロフィール
1975年福岡市生まれ。幼少より空想好きな性格。地元で大学を卒業し、まずはホテルへ入社。広報とブライダルに携わる。が、不思議な縁でコンサル会社に転職し、2001年『九州のムラ』という本や人々と運命的な出会いをする。本の販売管理に九州のムラやマチを周る。エコツーリズムに興味をもち、また海外生活を経験したいという小さい頃からの夢の実現に(三十路を前にしての焦りも加担し)、退職してニュージーランドへ飛ぶ。
*『九州のムラ』はこちら


なぜニュージーランドに行くことに?
「九州のムラ」に出会って、エコツーリズムを知る。海外へ行きたいという何の目的もなかった夢に、「エコツーリズム」というキーワードを見出し、なぜか、アメリカとニュージーランドを比較。「同じ金額のお金を持って行くなら、ニュージーランドの方が長く滞在できる!」という安易な理由で、最終的には決定。また、その「小ささ」に惹かれた。

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