エコツアー・ドット・ジェイピー









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オランダ留学通信

 第4回 

おー、こわっ!!
フランツ・ジョセフ氷河ウォーキング

ウエストランド国立公園
2004年4月15日着信


ペンギンさんご一行のよう。氷河を歩き始めた頃は、まだ余裕たっぷり。


 「氷河ウォーキング」「氷河ハイキング」。──この楽しそうな言葉からは想像もつかない1日を過ごすことになりました。
 そうだよねー、氷河なんだから平らなハズがない。むしろ、あのとんがった、相当の高さの氷の間をぬって歩くんだから、すごいことのはず……。何しろ歩き終わった後の私の膝はガクカクで、足全体が激しく笑っているのですから。


 フランツ・ジョセフ(Franz Josef)氷河を歩こう!
 そう決めた私は、3月6日、南島の東海岸中央・クライトチャーチ(Christchurch)からサザンアルプスを越え、西海岸へと横断する国内で一番人気の山岳列車、トランツ・アルパイン(Tranz Alpine)急行に乗りました。途中、アーサーズパス(Arthur's Pass)国立公園を経由する、美しい風景を楽しみながらの230km。贅沢な移動です。
 終点はグレイマウス(Greymouth)。乗車の際、荷物は自分で荷物用列車に運び、引換券を受け取ったのですが、降車時、その荷物はプラットフォームに放り出されていました。引換券との交換もなく、各自勝手に持っていけというアバウトさ加減には、少々面食らってしまいました。ここからバスに乗り、フランツ・ジョセフ氷河へと南下します。


 


ネコと熱湯シャワーに遭遇

 ニュージーランドではバスが充実しています。ルートの決まったパスも買えるし、部分的に乗ることもできます。私はもっぱら後者を利用するのですが、旅行者の大半は前者を利用。1年間有効で一方向だけのものや、数カ月有効でどっちの方向にも移動できるものなどさまざまな種類があります。
 私は自由に行き先を変更したいので、訪れた場所では次の移動地までを購入するのがいつものパターン。今回もそうしました。フランツ・ジョセフ行きのバスは、マイクロバスで座席も質素。でも、悪くない乗り心地です。
 到着は夕方の5時。5つ星のユースホテステル(YHA)に宿泊したのですが、ネコがラウンジにいてびっくり。ネコ嫌いなのです。しかもシャワーでは熱湯を浴びてしまう不運にも遭いました。
 宿舎内の水回りの至る所に、「ここのお湯は超熱いので要注意!」と書かれていたのですが、私が利用したシャワーは、どっちに回せば水になるか湯になるのか分からなかったのです。熱湯を浴びた私は裸のままシャワーボックスを飛び出す始末。しかも、気温が低くて寒いのに冷水を浴びる羽目になりましました。
 ネコはいるし、ほんとに5つ星?と疑いながら、明日の氷河に備えて早めにオヤスミナサイ。でも背中が熱くて、なかなか寝付かれない!


ラニーニャで氷河が後退

 翌朝8時過ぎ、氷河ウォークを実施しているフランツ・ジョセフ・グレーシャー・ガイド(Franz Josef Glacier Guide)に集合。名前の書かれたリストにサインをし、各自、専用のブーツ・アイゼン・ピッケル・レインジャケット・ウール帽・手袋・靴下を受け取ります。ブーツは鉛か何かが足先に入っていてすごく重いです。
 そこから10分ほどバスで移動し、氷河ウォークの起点に到着しました。氷河は一般の人が自由に歩くことができます。
 バスの中や降りた所からは氷河を見ることはできなかったのですが、少し森の中を歩くと、遠くに白い谷が突如現われました。氷河なんて見たことないし想像もつかなかっただけに、感動。氷河の末端部分(ターミナル:Terminal)まで約30分歩きました。今日の天気は曇。氷河には曇り空が似合うと思っていたのでラッキーです。
 フランツ・ジョセフ氷河は、すぐ隣のフォックス(Fox)氷河と合わせて双子の氷河と呼ばれ、ターミナルが海抜240mに位置する世界でも稀な氷河だそうです。
 ここで氷河ができる仕組みを簡単に説明しておきましょう。スキー場のてっぺんに雪のタンク(ニーヴェ:Neveといいます。ここでは最深300m)があると想像してみてください。そのタンクには毎年20〜30mの雪が積もり、重みなどで硬い硬い氷になっていきます。そこから少しずつ氷がスキー場(Trunk)に流れ出し、岩石を削りながら、また溶けながら、休憩所のあるターミナルにまでたどり着くのです。現在は1日に5〜6mも動いているのだそう。
 氷河はニーヴェに溜まる雪と溶ける量のバランスで、前進と後退を繰り返します。現在は、何でもラニーニャ(「反エルニーニョ」だって。)現象の影響で、後退が始まっているとか。氷河はとっても繊細で、ほんの少しの天候の変化でも大きな影響を受けるそうです。
 雪が降って氷河になるまでには40年かかると聞きました。約26kmある氷河の末端部分の氷は、いつ降った雪なんでしょうね?



最初に氷河が見えた瞬間。 感動だった。


アジア人のパワーを見せてやる

 さて、氷河ウォーキングの参加者は30人。10人ずつグループ分けされましたが、“最速グループ”にあと1人足りないらしい。「今日、1人で来てる人は?」 ほとんどがカップルや友達との参加。ハイハイ分かりました。なぜかゆっくり行きたいという気持ちとは裏腹に自ら名乗り出てしまい、参加者にヒューっと、はやされました。日本人は私の他にはいません。「ここでアジア人のパワーを見せなければ……」。見せなくてもいいのに。
 そんなわけで、欧米人男性9名に混ざることになってしまいました。ガタイはでかいし足も長い。──天愛は付いていけると?
 ターミナルに着くと、そこには「EXTREME DANGER」(超危険)と書かれた看板が。すぐ後ろには、氷河のバカでかい末端部分が、今にも目の前に押し流されてきそうな勢いで鎮座しています。
 時折、ズズズーっという不気味な音とともに、溶けている。うーこわ。
 その近くでアイゼンを付けました。ただでさえ重い靴なのにアイゼンの重みも加わり、足を上げると、重力で「ストン」と地面に落ちる。まして私は博多っ子。氷なんてスケート場くらい! すでに足がこわばっています。周りもみんなペンギンみたい。
 さあ、本格的に氷河ハイキングを開始。まずは氷の塊の中を歩きます。歩きづらい所は、ガイドがピッケルで階段を作りながら進みます。
 氷の階段! ロマンチックー、です。
 足場は割としっかりしていましたが、アイゼンに慣れるまでかなり時間が掛かり、足元ばかりが気になってしまいました。周りには何百年前に降った雪たちがこれ以上くっつけないほどに固まり、その滴を輝かせています。
 氷河の壁に貼りつき、ほっぺたをくっつけ目を閉じてみました。とっても冷たくて痛いけど、遥かなる時の流れに不思議な空間を感じます。あ、でも、こんなことしていたら、置いていかれてしまう!


氷河の両側は切り立った谷間。氷河上の人が見えますか?



ガイドが氷河を削りながら進む。
ガタイのでかい欧米人男性チームに入ってしまう。



これが最初で最後の笑顔になるとは……。


恐いから笑う。その笑いがまた恐い

 かなり大きな氷の壁が時折現われるようになります。幅の広いクレバス(氷河の裂け目)には、簡易橋が掛けてあります。クレバスの底は見えず、ただ暗い隙間があるのみ。落ちたら氷齢?何百年の氷と同居することになりそう。
 橋をいくつか渡り、小休憩。ここまでは泥にまみれた氷塊が多かったけど、これ以降は青い氷が出てきます。何でも、光──赤色から青色までの波長のうち、波長の短い青は、小さな粒子に当たると散乱しやすいのだそう。空が青く見えるのと同じ原理です。青い氷河はきっと、氷の中にたくさんのチリや岩の粉をたくさん含んでいる、年寄り氷河なのかもしれません。とにかく美しい青です。
 何度も身の危険を感じる箇所が出てきます。男性陣は背も高く、ヒョイと簡単に登る。私も身長は170近くあるんだけど全然かないません。登ると言っても、氷塊の裂け目を登るわけで、しかも足元はクレバスの淵だったりする。ピッケルを頭の上の氷塊に突き刺し、それを頼って登り上がるんだけど、氷塊が硬すぎてピッケルが刺さらない。しかも刺さっても、それが自分の体重を支えられるか信用できない。時には、クレバスの間の両側の壁に、忍者のように両手両足を突っ張って進む。これ、恐怖です。
 恐くて動けなくなるシーンも何度かありました。たとえば忍者のときなんかは、足を置く場所は一応削ってあるんだけど、右足と左足を違えただけで、もう動けなくなる。顔は笑ってるけど、もう一歩も進めない。「I can do it! I can do it!」 と声に出して恐怖心を振り払い、足を動かします。ドイツ人のヨークが一生懸命助けようとするんだけど、私の動きがもう完全におかしい。足場はあっても手でつかむ部分がない。つるっつるの氷の壁を支えて押すだけ。
 こんな場面が何度も続くようになると、イタリア人がそのたびに笑い転げるようになりました。どうやら恐怖心が笑いに転じたようです。余計こわい。しかも、私達の後から来ていたグループの参加者が足を滑らせ、ミニクレバスの間に落ちた。幸い大事には至らなかったけど参加者の顔には不安の色も。でもね、概して欧米人は恐怖心を持ってるかどうか疑わしいんですよねー。



クレバスを渡る瞬間。楽しそうでしょ♪



氷河のアート。



ときどき青空が見え、氷河が輝く。


翌日は氷河を見渡す往復9時間のトレッキングへ

  後半戦はそんなこんなで、ほとんど写真を撮れませんでした。雪山さえ経験のない私が、氷河を登った。始終、心が落ち着かず、私にとってはリラックスのためのトレッキングが、逆に神経を使い心身ともに疲れる1日となりました。
 うー、これは1回で充分!! 高所恐怖症の人には、真剣にお勧めできません。
 ちなみに私は1日コースに参加したけど、半日コースならOKだと思います。危険な箇所はナシですから。その他、ヘリハイクといって、ヘリコプターで氷河の頂上付近まで行き、そこでヘリを降りて歩くというのもあります。
 この氷河ハイキングは1920年頃から行われている歴史あるものだそうです。太古の森ならぬ太古の氷に出会える、貴重な時間になります。
 ヨークとの会話。「ここで落ちたら氷に閉じ込められるよね。そしたら何百年後、新鮮な肉のまま、発見されたりして!」。……試したい人はどうぞ♪


 翌日は往復9時間かけて、フランツ・ジョセフ氷河を見渡せる展望台ロバーツ・ポイント(Roberts Point)へのトレッキングをしました。前日、氷河を歩き回っているだけに、全体を見渡せて気分爽快。かなり健脚向きのコースだと聞いており、実際ハードだったわけですが、高齢者にも何度もすれ違いました。海外では老若男女が手軽に行えるアクティビティとして、普通にトレッキングを楽しんでいます。
 イタリア人のサンドラは、足ガクガクの私を上の方から見守りながら歩いていました。彼女も前日に氷河を終日歩いているというのに。
 実は、この2本のハイキングがもとで古傷のある膝が痛み始めました。しばらく長距離トレッキングはお預け。鍛えなくっちゃ。



ロバーツ・ポイントから見たフランツ・ジョセフ氷河



***** Mainly FinePrices *****
*Glacier Experience FULL DAY /$105.
(URL:www.franzjosefglacier.com
 *Access
Tranz Alpine Express(CHCH to Greymouth )/$79.
Bus(Greymouth to Franz Josef)/$30.
 *Accomodation(Franz Josef YHA) @24*3nights/$72.
 *Food/$30.
**TOTAL:$316**


みなみ てんあい プロフィール
1975年福岡市生まれ。幼少より空想好きな性格。地元で大学を卒業し、まずはホテルへ入社。広報とブライダルに携わる。が、不思議な縁でコンサル会社に転職し、2001年『九州のムラ』という本や人々と運命的な出会いをする。本の販売管理に九州のムラやマチを周る。エコツーリズムに興味をもち、また海外生活を経験したいという小さい頃からの夢の実現に(三十路を前にしての焦りも加担し)、退職してニュージーランドへ飛ぶ。
*『九州のムラ』はこちら


なぜニュージーランドに行くことに?
「九州のムラ」に出会って、エコツーリズムを知る。海外へ行きたいという何の目的もなかった夢に、「エコツーリズム」というキーワードを見出し、なぜか、アメリカとニュージーランドを比較。「同じ金額のお金を持って行くなら、ニュージーランドの方が長く滞在できる!」という安易な理由で、最終的には決定。また、その「小ささ」に惹かれた。

◆ 南天愛のニュージーランド・エコツアー通信 ◆
これまでの話

第1回
第2回 砂の岬にシロカツオドリのコロニーを訪ねる
第3回 砂干潟渡りが最高! 3泊4日の海岸線トレッキング

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