エコツアー・ドット・ジェイピー









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オランダ留学通信

 第2回 

砂の岬に
シロカツオドリのコロニーを訪ねる

フェアウェル・スピット
2004年2月10日着信


まるで砂漠のような砂浜が続く。


 こんにちは。ニュージーランドへ来て2カ月となりました。ご縁のある方にお送りしているレポートです。時間のある方は読んでいただければ幸いです。


 1870年、ニュージーランドの発見者であるキャプテン・クックがこの地を離れる際に、出航地となった岬に付けた名前が「Farewell」(さらば!)です。その岬、フェアウェル・スピットを訪れるエコツアーに行って来ました。
 原住民であるマオリはここを“Onetahua”と呼んでいたそうです。英語訳では"heaped up sand"。直訳すると「砂の堆積」ですが、「莫大な量の砂でできた長い砂浜」というのがニュアンス的には正しいかもしれません。実際、この岬はニュージーランドの中でも最も長く、長さは35km、幅は800mもあります。砂州は14,000年前の氷河期から作り始められたそうです(・・・ところで氷河期にも砂はあったのでしょうか???)。
 この砂州はサザンアルプス(南島南部)の川が起源。川が氾濫すると、タスマン海の沈殿物などが海流で押し流され、Spitあたりで他の海流とぶつかって勢力を弱められ、ここに大量の砂礫(小石や砂)を残していくらしい。砂礫は年々増加し、岬は少しづつ伸び続け、幅も広くなっているそうです。




お天気は絶好の曇り空。いざ、エコツアーへ出発!

 1月21日午前11時、Collingwoodという南島最北部の海沿いの小さな町にエコツアー参加者が集合しました。出発時間は潮の満ち干に合わせて毎日異なります。曇り空だけど屋外での活動には最適な天気。なんせここでは日本の7倍もの紫外線が降り注いでいるのですから。
 サファリバスに乗り込むと、バスの上半分ほとんどが窓で、車窓を楽しむのに工夫されています。
 Farewell Spitは世界的に知られた野鳥保護区で、参加したツアーは「Gannet Colony Tour」(Farewell Spit Eco Tours社)。Gannet(シロカツオドリ)のコロニーを訪れるものです。参加者は約20名。エコツアーとしては多い人数です。催行は1日に1回のみで、約6時間半の行程。本日のガイドはKerstanという男性でした。
 出発して間もなく、バスはPuponga Farm Park に入ります。
 ニュージーランドではDepartment of Conservation(DOC/自然・環境関係の行政機関)が国立公園や森林などを管理していて、ここもその管理になります。
 Spitへの入口となるPupongaまでの道のりで不思議な木の森を通りました。なんと言うか、細身の体には何も身に付けず、頭だけが天然パーマのような、そんな木でした。夏真っ盛りなのに、森の木々はそう暑そうには見えないから不思議です。海岸沿いの山々は、ほとんどこの木で覆われていました。
 30分ほどで、Pupongaの海岸に到着。ここには観光案内所もあり、一般車両も乗り入れることができます。目の前に真っ白な砂浜と灰色がかった海が開け、さまざまな鳥たちが静かに羽を休めている。でも遠くてよく見えないのが残念・・・。
 海岸へと続く道には鍵が掛かっていて、2社だけがFarewell Spitへのツアーを許されています(Gannetコロニーへは私が参加した1社のみ)。もちろんツアーに参加しなくても歩いて楽しむことはできるのですが、気の遠くなるほど歩かなければなりません。


Cape Farewell。このサファリバスで移動。



海岸を走るサファリバス。(c)Farewell Spit Eco Tours


野鳥の楽園を発見! 

 鍵をあけ、Spitへとまた一歩近づきます。サファリバスで海岸を走ることには、正直「ワクワク」体験。時には海の中を、時には砂の上をバスは走ります。エコツアーといえども環境への影響が全くないツアーは不可能に近いと思うのですが、バスで海岸を走ることが低インパクトの行動だとすれば、岬まで歩いて行くのが究極のエコツアーなのでしょうね。
 海岸に出ると、すぐに目の前の鳥たちの多さに圧倒されます。この岬では、100種類もの野鳥が観察できるらしく、多いのはWaderと呼ばれる種類(サギ・ツルなどの足と首が長い鳥)。北半球で夏を過ごし、秋になるとシベリアやアラスカなどのツンドラから飛んできます。10,000km以上もノンストップでニュージーランドまで飛び続け、その大半がこの岬に来るのだそう。
 どうやって方向や場所を確認するのかな。天然のGPSを備えているみたい。日本では鳥に興味がなかったし(鶏にはあるけど!)、バードウォッチングを経験したこともなかったけど、すぐにその美しさに心が奪われました。
 しばらく進むと、砂浜に黒くて重たそうな鳥がたくさん座っていて、バスでそれ以上進むことができなくなりました。
 座るという表現がふさわしいほどずっしりして見えたのがBlack Swan(クロハクチョウ)。黒いので一羽が大きく見えたのかもしれませんが、群れている様子は大きな大きな一羽の鳥のよう。バスは鳥の100m以上手前で停車していましたが、少し経つとこちらに気づき、海へと移動し始めました。その様子のとても美しいこと! 長い首を海の方へ伸ばすと、しなやかに体も一緒に運ばれ、海の上をすーっと移動する・・・。大きな体のどこに、そんな柔らかさがあるのかしらと思えるほど(相撲の関取も同じなのかな)。
 その他、Dotterel(チドリ)、Godwit(シギ)、Oyster Catcher(ミヤコドリ)などなどを見かけました。
 個人的にはDotterelがとても好きになりました。羽を休めているときは特別感じなかったけど、飛んでいる姿の何と愛らしいこと!


Dotterel(チドリ)(c)Farewell Spit Eco Tours



Godwit(シギ)(c)Farewell Spit Eco Tours



Oyster Catcher(ミヤコドリ)(c)Farewell Spit Eco Tours



Royal Spoonbills(ヘラサギ)(c)Farewell Spit Eco Tours


どこかで見たようなオットセイ3兄弟

 クロハクチョウの砂浜から反対側の海岸へと森の中をぬけました。Fossil Point。岬は東へと伸びていますが、ここは付け根の北側の地点で、Tasman海が広がっています。白い雲が青空にたなびき、ここから35kmもの砂浜が続くのです。
 遠くは白い砂煙に包まれて見渡すことができません。風も相当強そうです。これほど長くそして美しい海岸を、日本ではもう見ることができないのでは。砂浜とは言っても、至るところに砂丘があり、高さが20mにも及ぶものもあるので、ちょっとした砂漠にも見えます。
 左手には海、右手には砂漠。その間をバスが走ります。途中バスを降りて砂丘へ上がってみました。風がとても強くて砂粒が肌にビシバシあたり痛い。ちょっとした砂嵐です。砂丘の上から急な斜面を走り降りましたが、これがなかなか爽快! お天気は次第に晴れてきて、海の色も深いエメラルドグリーンになりました。
 今度は茶色くて、もっと重たそうな物体が見えます。オットセイです。性格がまるで違う3人に出会い、どこかの兄弟を見ているようだった。ひとりは超小心者、バスが少しでも動くともう大変な勢いで海に入っていき、もうひとりはその子を心配するように私たちを威嚇。もうひとりは全く気にせず、近くを通っても眠っていました (・・・実際は、オットセイからは最低20m離れて見るというルールがあります) 。


観光客を気にせず眠るオットセイ。(c)ニュージーランド観光局


鳥の声、声、声。コロニーに到着

 やっと目的地に到着。かなり向こうに白い斑点の砂丘が見えます。コロニーです。
 バスを降りて15分ほど歩くと、割と大きなGannetが何匹か飛んできましたた。たぶん2mくらいの大きさ。私たちの頭上で羽ばたいたまま止まり、私たちをじっと見ています。ガイドが「私たちをチェックしているのです」って言ったけど、本当に確認しているようです。OKが出たのか、むこうも安心したかのようにコロニーへ戻っていきました。
 コロニーの手前100mあたりで砂浜が途切れ、海になります。向こうの砂丘からは鳥の声、声、声・・・。昨年数えたら約7,000羽もいるそうです。
 ここの砂州のコロニーは、他とは違う点があると言われています。
 まず、他所では高台で丈夫な岩の上などにコロニーを作っているのですが、ここはほぼ海面と同じ高さにあるということ。次に、ここでは風や海の動きが激しく、コロニーの土台となっている砂丘の形が頻繁に変わっていること。要するに、ここのGannetは無頓着で順応性が高い?のかもしれません。
 Gannetがシロカツオドリだということは事前に調べてはいましたが、「何となく美味しそうな名前だな」と思ったくらいでした。しかし、実際に見てみると、この鳥の美しさに惹かれてしまいました。白い鳥なのですが、翼の後方部分と足は黒く、頭には淡い山吹色をつけています。その山吹色がこの鳥をとても上品に見せているのです。
 双眼鏡でコロニーをお邪魔すると、所々に大きなふわふわの綿毛。赤ちゃんGannetです! 赤ちゃんにクリーム色はなく真っ白。10月頃から産卵が始まり約110日でふ化するのだそうです。おとなしく座ってはいますが、際立って美しい鳥もいて、人間と同じだなーと感じました。


対岸からGannet(シロカツオドリ)のコロニーを観察。
(c)ニュージーランド観光局



右にいるのがGannetのふわふわ赤ちゃん。 (c)Farewell Spit Eco Tours



羽を大きく広げて飛び立つGannet。(c)Farewell Spit Eco Tours


灯台守の子供たち、GinaとGllenの物語

 名残おしくもコロニーを離れ、途中海の中を渡り、Lighthouse(灯台)へ。 低くて長い砂州は船からは見えづらく海難事故が多発したため、1870年に灯台が建てられました。1984年に自動化されるまで灯台守が住んでいたそうです。
 遠くから灯台を見ると緑の中にそれがあります。それまでは砂漠のような海岸だったので不思議に思うとそのはず。彼ら灯台守が、すべて土を陸から運んできて、船からより分かり易くするために木を植えたということでした。さまざまな苦労があったんだろうな。


現在の灯台、かわいいかたちです。

 灯台がある場所で、お茶のひととき。コーヒー、紅茶やマフィンをいただきました。ここでは、砂州で見られる生き物の標本、貝類、昔の海難事故などが展示されいます。なかでも一番心に残ったものは写真集。灯台守のコール一家を紹介したものでした。
 町からかなり離れた陸の孤島には3家族の灯台守が住んでおり、コール家にはGinaとGllenの2人の子供がいました。このふたりは灯台守家族の唯一の子供たち。写真集では5歳と2歳くらいです。2人で遊ぶしかなかったのでしょう。週に一度、日用雑貨や食料、手紙・新聞などを積んだトラックがSpitを訪れていましたが、2人は毎日のようにトラックを家の前で待ったそうです。


昔の灯台の写真と、GinaとGllenの写真が載ったアルバム。

 母親は、家族が身に付ける全ての洋服を作り、美容師も務める(いわゆる)よくできた女性。たまには町へ洋服を買いに行きたかったそうです。Gllenは寒い日、母親が使ったあとのオーブンに足を入れて暖めるのが大好き。Ginaはとても面倒見が良く、気の利いた子供だったということです。2人は母親の誕生日にスカートを作ることを思い立ち、一生懸命作ってプレゼントしたんだって。
 なんてステキな話なんでしょう!
 灯台守の休暇は年に1回3週間のみ。それ以外は全てこの岬で過ごしたそうです。こんな稀な環境で育った2人に、とっても会いたいと思いました。だけど残念なことに、5年ほど前に2人とも天国へ召されたそう・・・。GinaとGllenに後ろ髪をひかれながら帰路へつきました。


 このツアーでは良いガイドに恵まれ、彼は始終詳しい説明をし続けてくれました。鳥の名前など聞い慣れない言葉が多く、録音したのですが、後で聞いたら風の音でほとんど聞こえず(という事にしておこう)、聞こえる所も理解に苦しみました・・・。
 理解しよう、なんていうこと自体が無理だったんでしょうね。エコツアーは、ガイドのしゃべりがあってこそ深く知ることができ楽しめます。海外のエコツアーを真剣に楽しもうと思うのであれば、まずは英語の勉強が必要です(もしくは日本人ガイドのある所を探すのがいいのかな?)。
 ともかく、このツアーに参加してやっぱり気になったのはヒトでした。GinaとGllen、今ごろ天国でもトラックを待っていることでしょう。

***** Mainly FinePrices *****
Gannet Colony Tour/$85
Cape Farewell Tour/$70
Bus(Nelson to Collingwood round trip by K bus)/$66
Accomodation(Sumerset House BBH) @22*2nights/$44
Food/$20
TOTAL:$285

*****  Special Thanks(写真提供) *****
Farewell Spit Eco Tours
http://www.farewellspit.com/

ニュージーランド観光局(Tourism New Zealand)
http://www.newzealand.com/


みなみ てんあい プロフィール
1975年福岡市生まれ。幼少より空想好きな性格。地元で大学を卒業し、まずはホテルへ入社。広報とブライダルに携わる。が、不思議な縁でコンサル会社に転職し、2001年『九州のムラ』という本や人々と運命的な出会いをする。本の販売管理に九州のムラやマチを周る。エコツーリズムに興味をもち、また海外生活を経験したいという小さい頃からの夢の実現に(三十路を前にしての焦りも加担し)、退職してニュージーランドへ飛ぶ。
*『九州のムラ』はこちら


なぜニュージーランドに行くことに?
「九州のムラ」に出会って、エコツーリズムを知る。海外へ行きたいという何の目的もなかった夢に、「エコツーリズム」というキーワードを見出し、なぜか、アメリカとニュージーランドを比較。「同じ金額のお金を持って行くなら、ニュージーランドの方が長く滞在できる!」という安易な理由で、最終的には決定。また、その「小ささ」に惹かれた。

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