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イトヒロの東京不自然図鑑

 

第3回「有明海の渡り鳥」

ハマシギ
ハマシギ


 皆さん、ご無沙汰しておりました。今年はなかなか寒くならないなぁと思いきや、突然寒さが訪れここ九州でも雪が降り出す始末。私にはつらい時期の始まりです。

 さて今回は、佐賀のもうひとつの海、有明海に行ってきました。有明海にはムツゴロウ・ワラスボなど有明海でしか見られないユニークな生き物たち(一部、八代海にも分布)が生活していますが、この冬の時期、多くのお客が訪れます。それは渡り鳥たち。干潟に見られる渡り鳥の代表的なものが、シギ・チドリ類です。

有明海にはたくさんの渡り鳥がやってくる。


干潟につけられた鳥たちの足跡。



 彼らは主にシベリアを繁殖地とし、寒さが厳しくなる季節を迎えると、オーストラリア・やニュージーランドを目指します。それほどの長い旅には、途中で休息・エネルギー補給が必要となります。そのための場所を中継地とよび、多くのシギ・チドリ類が有明海の干潟を訪れます。観察を行った鹿島新籠はシギ・チドリ類とその生息環境である湿地の保全を目的とした「東アジア・オーストラリア地域シギ・チドリ類重要生息地ネットワーク」に登録されています。

 この場所にはシギ・チドリ類以外にも、世界に2,000~3,000羽しかいないズグロカモメや、世界で1,000羽ほどしかないクロツラヘラサギなども訪れます。このように渡り鳥たちが有明海でエネルギー補給をできるのはエサとなる底生動物が豊富に存在するからなのです。有明海は日本最大の干潟面積を誇り、国内の干潟面積の約42%を占めるといいます。

私たちの命も干潟の無数の生き物に支えられているといえる。


 このような広大な干潟に数多くのカニやゴカイ、二枚貝などの底生動物が生息し、有明海の生態系を支えているのです。底生動物は食料として私たちの生活を支えているだけでなく、川から注ぎ込まれた汚れの分解を手伝ってくれます。
 泥の中の有機物を食べ、巣穴を掘るなどして泥を掻きまわし酸素を供給し、分解の主役を務めるバクテリアの働きを活発にすることで有機物の分解を促進させているのです。

 この足元の干潟の中には、無数の生き物たちが生きています。その無数の命に渡り鳥は支えられています。それと同じように私たちの命もこの生き物たちに支えられているのです。
 しかしあまりにも有明海の包容力が大きいために、私たち人間はあたかもそれが当然のことと思うようになってしまったのかもしれません。そして多くの人が海とのつながりを失ってしまたようにも思えるのです。渡り鳥たちを見ているとそのことに気付かせてくれているような気がします。




いとうたつのり:1976年佐賀県北波多村(現唐津市北波多)生まれ。学生時代は環境をテーマとして化学を学ぶ。卒業後、就職するも自分の目指す「環境の仕事」を探すため退社。その後、長野の高原野菜のアルバイトなど職を転々とし、現在の自然教育施設に。そこで身の回りの生態系は世界にたった一つしかないことを知り魅了される。

 
  

◆たっちゃんの生き物観察隊──これまでの話◆

第1回
第2回 「海辺の生き物たち」
 
 

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