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イトヒロの東京不自然図鑑

 

第2回「海辺の生き物たち」


 こんにちは、「たっちゃん」こと伊藤辰徳です。今、佐賀にある教育施設で「佐賀の自然の素晴らしさ」を伝える仕事についています。私たちの身の周りにはたくさんの生き物が住んでいますが、ついつい見落としがちですよね。このコラムではそんな生き物たちと出会えるきっかけになればなあと思ってます。


 

 照りつける太陽、うなるようなセミの声、さあいよいよ夏がやってきました。こんな暑い夏、みなさんはどうお過ごしですか? 海に海水浴って人も少なくありませんよね。でもただの海水浴では物足りない、そんな人にオススメなのがシュノーケリング。南の海に行けばよく目にするシュノーケリングの光景も、近くの海ではなかなか見る機会がありません。でも近くの海にも新しい発見や感動が詰まっています。

 シュノーケル3点セット(マスク、シュノーケル、フィン)を持って海へ出かけます。大潮のときの干潮の時間、1〜2時間前がベストです。さっそく準備を整えて、海に入りましょう。胸のどきどきが抑えきれません。「ひゃっ」、まだまだこの時期でも水温は低いようで肌寒さを感じますが、そんなのは関係ありません、生き物を探しに行こう!  さあ今日はどんな生き物に出会えるかな?

 さっそく透き通ったピンク色をした小魚の群れが!「チャガラ」たちです。こうみえてもハゼ科の魚なんです。そのほかにもカワハギやベラのなかまたちが泳ぎまわっています。海の中で見る魚の美しさは段違いです。一緒に空間を共有しているという一体感がそうさせるのでしょうか。
 岩場に目をやると、なにやら鋭いとげでこちらを威嚇する生き物がいます。「ガンガゼ」です。長いトゲをもったウニですが、絶対に触らないでくださいね。ものすごく痛いうえになかなかトゲがとれません。遠くからそっと眺めるだけにしましょう。ほかにも、あ、口を大きく空けたような生き物がいます。「ザラカイメン」というカイメンの仲間です。動くことはないのですが、動物の仲間です。

チャガラの群れ
ガンガゼ

ザラカイメン

 岩場を過ぎると藻場が見えてきました。うっそうと茂るアマモの中をよーく見てみると、なにやら大きな生き物が動いています。全身、毛皮で覆われたようにも見えます。「タツナミガイ」というアメフラシの仲間です。触ると紫色の汁をだす、あのアメフラシですが、英語では「SeaHare(海ウサギ)」といいます。大きさといい、見た目といいなるほどうなずけますね。

タツナミガイ


 藻場を抜けると砂地に出ました。なんか砂地が盛り上がっています。そっと砂をどけると、「あっ、クッキー」と思わずさけんでしまいそうなこの生き物、その名も「ヨツアナカシパン」。なんとウニの仲間なんです。よーく触ってみると体中小さいトゲが体中にあって、これをうまく使って砂の中へ潜って身を隠しています。なんか忍者みたい・・・。

ヨツアナカシパン


 岩場に戻ってきました。ときどき岩のうえで花びらがゆらいでいるように見えます。これ、花ではなく「ケヤリムシ」という生き物のエラの部分。釣りエサに使う青虫などのゴカイのなかまです。さらに泳いでいるとリボン状のひらひらしたものが岩にくっついています。何だろう? 生き物とは思えないけど・・・。あたりを見渡すとシロウミウシがいました。じっとしがみついていると思ったら、白いリボン状のひらひらしたものを出しているではないですか。
 そうなんです、これウミウシの卵塊なんです。この周りをさがすとよくウミウシに出会えるんです。「シロウミウシさん、産卵中ゴメンねぇ」。

砂に隠れているクサフグ
ケヤリムシ

ウミウシの卵塊(写真はシロウミウシのものではありません)
産卵中のシロウミウシ

ミヤコウミウシ


 どうでしたか? たった1時間ぐらいのシュノーケリングでもこれだけの生き物たちに出会うことができます。「沈黙の春」の著者として有名なR・カーソンは海洋生物学者でもありその著書「海辺 生命のふるさと(Theedgeofthesea)」で海辺をこう述べています。


「海辺は、寄せては返す波のようにたちもどる私たちを魅了する。そこは、私たちの遠い祖先の誕生した場所なのである。潮の干満と波が回帰するリズムと、波打ち際のさまざまな生物には、動きと変化、そして美しさがあふれている。海辺はまた、そこに秘められた意味と重要性がもたらす、より深い魅力が存在している。」
「海辺 生命のふるさと」R・カーソン 上遠恵子訳 平凡社


 海辺はあるときは海に、またあるときには陸地に変わるような、環境変化の激しい場所です。その過酷な場所にもかかわらず、生き物たちに満ち溢れています。そんな生き物たちをそっと見つめてみませんか。あなただけの感動がそこにはあります。



いとうたつのり:1976年佐賀県北波多村(現唐津市北波多)生まれ。学生時代は環境をテーマとして化学を学ぶ。卒業後、就職するも自分の目指す「環境の仕事」を探すため退社。その後、長野の高原野菜のアルバイトなど職を転々とし、現在の自然教育施設に。そこで身の回りの生態系は世界にたった一つしかないことを知り魅了される。

 
  

◆たっちゃんの生き物観察隊──これまでの話◆

第1回
 
 

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