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イトヒロの東京不自然図鑑

 

第1回「水辺の生き物 トンボ」

セイタカアワダチソウ

 こんにちは、「たっちゃん」こと伊藤辰徳です。今、佐賀にある教育施設で「佐賀の自然の素晴らしさ」を伝える仕事についています。私たちの身の周りにはたくさんの生き物が住んでいますが、ついつい見落としがちですよね。このコラムではそんな生き物たちと出会えるきっかけになればなあと思ってます。


 

 さて第一回目は“水辺”へ出かけて見ましょう。みなさんは水辺の生き物と聞いて何を想像されますか? “さかな!”。やっぱりそうですよね。でも水辺には魚以外にも私たちがふだん気にかけることのない生き物たちがたくさん住んでます。その生き物たちもどこにでもいるというわけじゃないんですね。自分が生活できる場所にしか住んでいないんです。ということは、逆に水辺の生き物を調べることによってその場所がどんな環境かを知る手がかりになるわけなんです。

 実際、水辺を調べてみるといろんな生き物が見つかります。カワゲラ、カゲロウ、トビケラのなかまなど、幼虫期を水中で過ごす昆虫たちがたくさん見つかります。カワゲラ?、カゲロウ?、トビケラ?、幼虫っていっても大人の姿なんて知らないぞ!って人も多いと思うんです。それに捕まえた生き物たちを分類するのも、熟練しないと相当難しい。分厚い図鑑と顕微鏡と何時間も“にらめっこ”なんてことになってしまいます。なんか億劫になってしまいますね。

 でも忘れている昆虫がいませんか、誰もが知ってて幼虫のとき水の中で生活する昆虫が……。そう“トンボ!”。トンボは“やご”として幼虫期を水の中で過ごし、やがてトンボとして私たちの前に姿を現すことになります。もちろんやごもどこにでも住めるわけではなく生活できる場所を持っています。だから同じように水辺の環境を知ることができるんですね。(水辺で見られる成虫でもその環境の評価はできるそうです。成虫になると分類もぐっと簡単になるのでオススメ! 詳しくは「生物による環境調査辞典」(東京書籍)、トンボのすべて(トンボ出版)を参考にして下さい)。

 トンボを紹介した理由がもうひとつあります。トンボは古くから私たち日本人の生活と深くかかわりをもった生き物なのです。
 トンボはウンカやヨコバイなどの農作物に被害を与えるような昆虫を食べてくれますから、人々にとってとてもありがたられた生き物でした。弥生時代の銅鐸にはトンボが描かれているものがあります。銅鐸は祭事のときに使われたといいます。その響きに豊作の願いを込めていたのでしょうか。

 また古代、日本を指す言葉に“秋津島(あきずしま/あきつしま)」があります。“秋津”とはトンボの古い呼び名です。神武天皇が大和の国見をされたとき、「蜻蛉(あきず)の臀(となめ)のごとくにあるかな」(広辞苑から引用)といわれたと記されています。それ以来、日本のことを「秋津島」、つまりトンボの国と呼ぶようになったといわれています。ひとつの国の名前が「トンボの国」というわけですから、よほど身近で親しまれた生き物に違いありません。

 子供のころ、虫捕り網片手にトンボを追いかけていたことを思い出します。皆さんの周りには昔見たトンボの姿を見ることはできるでしょうか、それともひっそりと姿を消してしまったのでしょうか。コラムを書きながら自分の村の周りを見渡して見ると、こんなに水辺って遠かったっけ(物理的にも精神的にも)と感じます。もっと気軽に行ける場所が昔は多かったような気がするのですが。水辺に行ってみませんか? トンボのめがねは昔と変わらず赤く、青く、そして緑に透き通っています。もし今トンボが新しいめがねをかけたならそれは何色なのでしょう。


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カゲロウの仲間
カワゲラの仲間

トビケラの仲間(筒の中に幼虫が入っています)
となめ

ハグロトンボは少し汚れた水辺で見られます。
ニシカワトンボは山地から平地の渓流にかけて見られます。



いとうたつのり:1976年佐賀県北波多村(現唐津市北波多)生まれ。学生時代は環境をテーマとして化学を学ぶ。卒業後、就職するも自分の目指す「環境の仕事」を探すため退社。その後、長野の高原野菜のアルバイトなど職を転々とし、現在の自然教育施設に。そこで身の回りの生態系は世界にたった一つしかないことを知り魅了される。

 
 
 

編集部から

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「まずは身の回りの生き物を学びなさい」。 自然教育施設に勤めるたっちゃんが、上司にエコツアーを学びたいと相談したときに返ってきたのが、このアドバイスだったのだそう。 「よく考えてみると、確かに身の回りの生態系は世界にひとつしかないもの。その視点で身近な自然を歩いてみると新しい発見で満ち溢れている。それをコラムを書けたら」と、たっちゃん。子供たちに自然と触れあうことのすばらしさを伝えているたっちゃんの目を通して、私たちも「生き物探検隊」の隊員として身近な発見の旅に出かけましょう。

 
 

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