エコツアー・ドット・ジェイピー


オランダ留学通信

第13回
ありがとう、かえるくん

upload:2005.03.18


追悼 マックス・ベルジュイス氏(2005年1月25日逝去。81歳)


1月末、悲しいニュースが飛び込んできました。

マックス・ベルジュイス(Max Veljuis)というオランダを代表する絵本作家が亡くなりました。いつかこの連載でとりあげたいと思っていたのに、訃報になってしまったのが残念です。

オランダは絵本大国。”読み聞かせ”が盛んで子供たちはベッドに入る前、両親に絵本を読んでもらうんだそうです。なんてったって残業もない週36時間労働の国なので、時間はたっぷり(・・・っていうとオランダ人に「私たちだってチョー忙しいんだから」ってマジギレされちゃうけど、ついつい日本と比べてしまうんですよねぇ・・・)。それにアートが盛んな国なので読者の目も肥えてます。忘れちゃいけません、日本の国民的キャラクター、ミッフイーの作者、ディックブルーナだってオランダ人ですよ。

そんな国でマックスはブルーナと並ぶ押しも押されぬ大御所でした。

グラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートし、児童書には40年来かかわってきました。若いときから活躍しており数々の賞に輝いてきた彼ですが、2004年度に受賞した“国際アンデルセン画家賞”は絵本界のノーベル賞といわれる大変栄誉ある賞です。
アンデルセン賞の過去の受賞者リストには『ムーミン』のトーベ・ヤンソンや『かいじゅうたちのいるところ』で有名なモーリス・センダック、安野光雅さんも名をつらねています。

80歳を超えても茶目っ気たっぷりのマックス、彼の晩年の代表作は<かえるくん:キッカー>(オランダ語ではかえるをKikkerといいます)、自分の分身だと思って作品を制作したのだとか。どれもこれもテンポがゆったりして、ほのぼのとした作品です。

以下2点おおまかにあらすじをご紹介しますので、本屋さんや図書館でのぞいてみて下さい。


「かえるくんどうしたの?」

胸がブンブン、ブンブン動悸をうって心配になったかえるくん・・「病気かな?」理由は真っ白なあひるさんに恋をしたから。でも自分はなんの取り柄もないって落ち込んで、恋煩いで夜も眠れないかえるくん・・・空高くまで飛べるようになったらあこがれの人がきっと振り向いてくれると信じて練習に励みます。が・・・

(日本語訳は現在品切れ中。重版は未定)

「かえるくんとたびのねずみ」

見知らぬ旅人が村はずれでキャンプしています。みんな「流れ者だ」「犯罪者」だとかうわさして寄り付きません。でも怖いものみたさで、かえるくんはおっかなびっくり、森の外れまで旅のねずみがどんな生活をしているのか確めにいきます。気配にきづいたねずみは・・かえるくんどうなる?


日本語版発行: セーラー出版
目録はこちら


かえるくんはいつも好奇心たっぷりで、色んなことに挑戦したりするんだけど、ちょっと自身がなくてすぐイジイジしちゃったり。でも優しいともだちに囲まれて、ふんわり、のびやかに暮らしているんです。

マックスはワーゲニンゲンから車で40分ほどのアーネムという町の美術学校で学んだので、私と同じ風景を見ていたのかも。

ワーゲニンゲンの景色は絵本の中にいるみたい。春先に自転車こいでいると、そこらへんの草むらに“かえるくん”や友達のブタさん、あひるさん、うさぎくんたちが座っていそうで、「あ、こんな感じって」って実感できるんですよ。

かえるくんシリーズは日本でも10年前から翻訳出版され絵本好きの人たちの間では根強い人気です。また彼の初期の作品は楠田江里子さんが翻訳していたようで、ちょっとびっくり!実は日本でも知る人ぞ知るマックスだったんですね。

3編のお話が挿入された絵本。オランダでドキュメンタリーをみていたBFによると、表紙のシールは、この本を手にしてくれる読者のことを考えて、マックス本人が一枚づつ心をこめてはっていたそうです。
この本の表紙も、ちょっとよじれてゆがんだ感じ。でも、そんなエピソードを知っているとほっこりしてしまいます。


マックスは、まったく欲がなくビジネスにはまったくの無頓着でブルーナの何百分の一しか稼いでいないんだとか。というよりも自分の分身のかえるくんに特別の思い入れがあって、手を離れて「かえるくん」が世界でどんどん有名になることに複雑な気持ちを抱いていたそうです。最近は国内でミュージカルも上演されて大好評。行き着く先はハリウッド!?

ちなみにブルーナも、商売を厳しくチェックしているけれどお金にはこだわらなくて収益はほとんど寄付にまわしているんだとか。今も現役で愛用の自転車にのってアトリエへご出勤。マックスもブルーナも大成功のあと、自分らしさを失わなず、マイペースな庶民派として、多くの人から敬愛されています。そもそもアーティストに<お金>はそれほどの価値のあるものではないのかもしれません。

余談ですが、実は私、このかえるくんの熱狂的ファンです。どうしてもグッズを日本でも紹介したくてマックスに連絡をとったら、なんと直筆の返事で、<日本でかえるくんが有名になったら楽しいね!>とエージェントを紹介してもらったのです。が、この代理人とんでもない輩で・・・。

作者が亡くなってしまうと目を光らせる人がおらず、権利を持っている人の思いどおり。自伝に書かれているようにかえるくんは金の亡者の餌食になってしまうのかも。

悲しいことです。

でもかえるくんは永遠不滅。マックス氏のご冥福を心よりお祈りします。



かえるくんのサイトその1(フリーEカード:Kaartjeが送れます)
http://www.kikkervriendjes.nl/

かえるくんのサイトその2(オンラインでゲームなど)
http://kikker.zwijsenalgemeen.nl/show

国際児童図書評議会
http://www.jbby.org/ibby/activities02.html

やまねこ翻訳クラブ
http://www.yamaneko.org/bookdb/author/v/mvelthui.htm

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ワーゲニンゲンの春厳しい冬が終わると、花がいっせいに開きます。

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わっ!? なんだこれ。おたまじゃくしが大学講内の池にうじょうじょ。豊かな自然に恵まれています。でも、たくさんいすぎて、きもちわるい?・・・失礼しました。

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研究所では化石として発見された何千年も前のケシ種子を発芽させたこともあり世界的な注目を浴びたんだとか。この花はフツー。でもその記念すべき研究所の前で撮影。

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ひとあし先に桜を愛でましょう。日本から大学の植物園に持ち込まれた品種のようです。宣伝していないので日本からの留学生は少ないけれど研究者レベルの交流は盛んです。



るりさんは、「Ecozy.com エコツーリズムと持続可能な観光」というWEBサイトの運営者。世界最大産業である観光が、環境、社会、文化、経済に与える影響とはどんなものなのでしょう? 目からうろこですよ!
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◆オランダ留学通信──これまでの話◆

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第2回
「サンタがやってきた」
第3回
「レジャーで修士号」
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「インターネットと留学」
第5回
「女王様の誕生日」
第6回
「平和調印の街」
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「EURO 2004サッカー夢の競演」
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「マーケットに行こう」
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「<快適な住まい>が留学成功の鍵」
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