エコツアー・ドット・ジェイピー


オランダ留学通信

第12回
「博物館天国」今年のベストは?

upload:2004.12.15


会員数370万を誇るオランダのロードサービスANWB (社団法人日本自動車連盟=JAF=に匹敵する組織)が選ぶ”2004年度ベストミュージアム賞”に輝くナチュラリス。動植物はもとより、化石、鉱物、遺伝子、地底、バクテリア……地球上の生命のことなら何だってわかる。写真はナウマン象?

九州くらいの国土に博物館、美術館が千近くもあるオランダ、人口比においては、おそらく世界一でしょう。レンブラント、ゴッホ、フェルメールが鑑賞できる格調高い美術館や、「アンネの日記」のアンネ・フランクが住んでいた家、ろう人形館、ビールのハイネケン博物館や変わった所ではセックスミュージアムなんていうのもあってバラェティに富んでいます。ここの展示品は一部ぎょっとさせられるハードコアで、しらふでは、ちょっと鑑賞しづらいけど、アムスの駅から徒歩5分と地の利もよいし、あっけらかーんとしているので女性客も多く、いつも賑わっています。時間のたっぷりある方、話のネタに一度どうぞ。

そんな博物館激戦国において、2004年度のベストミュージアムに選ばれたのがライデンにある国立自然史博物館、愛称「ナチュラリス」(Naturalis)。こじんまりとした小さめの博物館ですが、展示方法がとても斬新で、ミュージアムというより<生命>をテーマにした現代アートの美術館といった印象です。来場者と展示物の壁が(文字どおり)ないので、なんだか知らないうちに、百科事典の中に紛れ込んで、ページからページを歩いているような気分になってきました。

最初に入場したのが、実物大の動物や鳥が何百体と並ぶ部屋。一匹ずつ惚れ惚れするほど精巧にできており、はく製かと思ったのですが、どうもそうではなく、手作りの模型のようです。日本人のミニチュア・フィギュア造りの才能もすごいけれど、ここのリアルさにはホォーッとため息がもれます。ナチュラリスはライデン大学の研究機関でもあるので、動物学者や植物学者が、展示物を厳しくチェックし、一切妥協を許さないのでしょう。 展示物はどこの角度からも眺められるように円形ステージに並べられているので、じっくり観察することが出来るし、なかには手すりからぶらさがっている動物もいて、遊び心もたっぷり。

配置の仕方も独特で、例えばひとくちに<猿>といっても何十種類が一堂に展示されていて圧巻です。一緒に並べることによって、アマゾン、アフリカ、アジアで生息するサルたちの大きさや、顔つき、色の違いが一目でわかり、文字の説明を読むのとは全然インパクトが違うんだなぁ、これが。

同じフロアーにあるクリスタルガラスの通路も幻想的で不思議な空間です。天井まで届くガラス壁の間に<押し花>になった植物が展示されていて、表と裏の両面から眺めることができます。あたりは照明が落とされ、緑と青の光が怪しく輝いており、水中を漂っているような気分が味わえます。

私がナチュラリスを訪れたときは「人体の不思議」という期間限定の特別展開催中で、展示室にはガリバーのように大きな人体模型がデーンと床いっぱいに広げられておりました。といってもあまりにも大きいので普通の展示方法ならば、そこに人の模型があるだなんて、きっと気がつかなかったことでしょう。そこで、天井すべてを鏡にしてしまい、自分が小人になって、人間の身体にはいっていくような錯覚をおこさせるのです。SFミクロ決死隊の世界ですね。

「レジャーと環境学科」はミュージアムや動物園といった娯楽・学術・美術施設マネージメントの方法論もカバーしていたので、在学中は幾つかの施設へ見学に訪れました。それまでは漫然と見る側だったのですが、楽屋裏をのぞくと色々な仕掛けがされていることがわかり、興味深いものです。学芸員“キュレーター”と呼ばれる人たちの腕のみせどころで、同じ展示物でも全く異なった印象を与えます。

アフガン戦争が勃発した頃のこと、アムステルダムで見た、企画展はその一例かもしれません。中近東の絨毯は高品質で、何世代にもわたって受け継がれてきた芸術品です。織り模様は多岐にわたり、部族ごとに門外不出の技法をもっています。ところが、戦争の影は、ここにも容赦なく忍び寄ります。平和な時代のモチーフは農作業の風景、花、植物、動物が主流ですが、ソ連進行によってカラシニコフや地雷にとってかわり、その後、欧米が介入するようになると、アメリカ製の軍用機、ミサイル、戦車が見受けられるようになります。ずらりと並べられた絨毯が強国に翻弄されるアフガン歴史のあり様を見事に再現していました。戦争報道には慣れっこになってしまっているのに、つむぎ込まれたカラシニコフを見たとき、ドキッとしてしまい、正面きって平和を訴えられるよりよほど心に残ったのです。これが学芸員の匠の技というものでしょうか。

国立自然史博物館(ナチュラリス)
トップページ右肩のイギリス国旗アイコンをクリックすると英語ページが開きます。
www.naturalis.nl

ミュージアムに興味のある人へ(インターネットミュージアム / 博物館情報工房)
http://www.museum.or.jp/


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くじらの背骨を再現?自然史博物館に向かう通路でみかけた橋。

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こんちわー。何百体の動物達がお出迎え。野性のほえ声が聞こえてきそうな展示室。 ナチュラリス展示品の総数は1千万点を越えるんだそうです。 設立は19世紀にさかのぼるらしく、由緒ただしい国の学術研究機関であったのです。

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おもわず触りたくなってしまうような質感。もちろん、さわっちゃダメですよ!実物大の迫力に、心はアフリカのサバンナへ飛躍。

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ゲノム理論?

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宇宙の生命体遺伝子構造をビジュアルに再現? ピカピカ光っていて思わず吸い寄せられる、展示品。

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通路の壁から恐竜の首と足がによっきり。背丈4、5メートルはありそう、こんなのに追いかけられたらひとたまりもないなぁ。超ミニ・ジュラシックパーク。リアルでちょっとグロいけど、こんな見せ方もあるんですね。この横では休憩できるようにコーヒー屋さんのスタンドが。ハンバーガー屋でなくてよかった!?

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シーラカンスの化石が、怪しく宙を泳ぐ。

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のっし、のっし。旧館から新館への通路でサイが見回り中?泣く子はいないか?不審者はいないか?・・・なんの脈略もないのに、ぽっとおいてあるところが、リアル感を増幅。


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同伴者とはぐれたら、ここで待ち合わせ?すやすや眠るサイの赤ちゃんに、せっかちな気分がほぐれます。


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ミュージアムショップ。国際自然保護基金(WWF)のぬいぐるみは、売上げ収益の一部が活動費に当てられるのだと思います。他にも美術品のようなカレンダーやポスター、小物など。奥には自然に関する書籍ならばなんでも揃う本屋さんが併設していて、みているだけで楽しい。なかには日本語版の“日本に生息する動植物事典”もありました。誰が買うんだろう・・・?


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ミュージアム中庭のカフェテラス。平日の午後だったので、あまり人の気配はありませんでしたが、静かでのんびり。都会の喧騒を忘れるにはもってこいの場所。


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セルフサービスで気をつかわなくてもいいから一人旅の人にも心地よいレストラン。 改装されたばかりなので、明るくて清潔。ナチュラリスは新館を増設して1998年にリニューアルされたばかりなんだとか。


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正面玄関をはいってすぐのカフェテリアとレストランの入り口。古い建物を上手に利用していてかえって情緒があります。展示物がおかれている新館はびっくりするくらいモダーン。この対比の激しさがオランダちっく?



るりさんは、「Ecozy.com エコツーリズムと持続可能な観光」というWEBサイトの運営者。世界最大産業である観光が、環境、社会、文化、経済に与える影響とはどんなものなのでしょう? 目からうろこですよ!
「Ecozy.com エコツーリズムと持続可能な観光」を見る


◆オランダ留学通信──これまでの話◆

第1回
第2回
「サンタがやってきた」
第3回
「レジャーで修士号」
第4回
「インターネットと留学」
第5回
「女王様の誕生日」
第6回
「平和調印の街」
第7回
「EURO 2004サッカー夢の競演」
第8回
「マーケットに行こう」
第9回
「オリンピックこぼれ話」
第10回
「<快適住まい>が留学成功の鍵」
第11回 「世界最古のプラネタリウム」


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