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イトヒロの東京不自然図鑑

<月イチ連載>

2004年3月3日up

 新宿から電車で10分。住宅地とはいえ、東京のど真ん中ともいえる世田谷にも自然があります。というより、都会でしか見られないような自然もあるのです。一般常識から言えば不自然とも思える東京の自然最前線を、お散歩がてらご紹介しましょう。

第9回「メジロ」

 どうやら今年は暖冬で、梅の花も散り始めているところもあるようですが、わが家の近所の梅の木はまだ満開で、小さな鳥がたくさん集まってきています。
 この鳥はスズメよりもひとまわり小さく、動きも素早いようです。明るいウグイス色(黄緑)のきれいな体をしているので「梅にウグイス?」と勘違いしてしまう人もいるかもしれませんが、本当のウグイスはウグイス色ではなくて、もっと地味な茶色です。この鳥をよく見てみると、目のまわりがくっきりと白くなっていて、これがメジロ(目白)の名前の由来になっているのです。
 メジロは都内にも棲んでいる留鳥ですが、夏の間は茂った林などで繁殖し、虫などを捕食しているのであまり目にしません。秋冬になって、果実や花の蜜を吸いに庭先にもやってくるようになり、急におなじみさんになるのです。 「チー、チー、チュル、チュル」と鳴き声もきれいなため、昔はよく鳥かごで飼って声を楽しんだと いいます。梅の花に飛んできて華やかな声で鳴く姿は、見た目にも春を告げるのどかな風景に映ります。
 このメジロという鳥はもともと暖かい地方に多い鳥で、都内にも棲んではいましたが、最近とくに都心部に増えているといいます。わが家のある団地でも、注意していると一年中観察できる野鳥のひとつです。メジロはとくにツバキの花が好きなようで、蜜の多いヤブツバキの花に頭をつっこんで、顔中花粉だらけにしている姿を見ることもあります。
 東京都心部にメジロが増えてきた理由は、ヒートアイランド現象による温暖化と、都心の街路樹に 多く植えられたツバキやサザンカの花の蜜を好むせいだといわれています。
 ところが、90年の三宅島噴火やそれ以前の大島の噴火を境に急激に増えていることから、自然災害をのがれて伊豆諸島から移住してきたという説も有力です。本当だとしたらショックな話です。人間だけでなく鳥まで避難していたとは。
  メジロといえば「目白押し」という言葉があります。これはメジロの若鳥が巣立つ頃に、木の枝にびっしり並んで止まることからできた慣用句なのです。でも、自然の中ではこのようなようすが観察されることは非常に珍しいそうです。昔はそんな光景がよく見られたのでしょうか。もしも「目白押し」の現場を発見された方がいらしたら、ぜひ報告してほしいと思います。
 


イトヒロ:少年時代の穴蝉とり名人にして東南アジアバックパッカー経由、草野球迷三塁手のイラストレーター。著作に「不思議の国の昆虫図鑑」(凱風社)、「草野球超非公式マニュアル」(メタ・ブレーン)、「旅の虫眼鏡」(旅行人)など。雑誌「子供の科学」に「イトヒロのご近所探検隊」連載中。

◆イトヒロの東京不自然図鑑──これまでの話◆

第1回
第2回 「アブラゼミ」
第3回 「スズメバチ」
第4回 「アオマツムシ」
第5回 「クマネズミ」
第6回 「ワカケホンセイインコ」
第7回 「チカイエカ」
第8回 「ヒヨドリ」

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◎第1回「タヌキ」◎第2回「アブラゼミ」◎第3回「スズメバチ」◎第4回「アオマツムシ」◎第5回「クマネズミ」◎第6回「ワカケホンセイインコ」◎第7回「チカイエカ」◎第8回「ヒヨドリ」◎第9回「メジロ」◎第10回「モンシロチョウ」◎第11回「アカミミガメ」◎第12回「ヒキガエル」◎第13回「アオスジアゲハ」◎第14回「ハシブトガラス」◎第15回「セイタカアワダチソウ」イトヒロの訃報に寄せて

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