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イトヒロの東京不自然図鑑

<月イチ連載>

2003年9月10日up

 新宿から電車で10分。住宅地とはいえ、東京のど真ん中ともいえる世田谷にも自然があります。というより、都会でしか見られないような自然もあるのです。一般常識から言えば不自然とも思える東京の自然最前線を、お散歩がてらご紹介しましょう。

第3回「スズメバチ」 

 都会でのスズメバチの被害が増えているそうです。
 そういえば去年の夏、我が家の団地のキンモクセイの枝で、直径30センチほどもあるコガタスズメバチの巣が見つかりました。業者に頼んで駆除してもらったのですが、都心の住宅にもスズメバチが巣を作るとは驚いたものです。
 近年、都会に進出しているのはコガタスズメバチとキイロスズメバチです。とくに適応著しいのは攻撃性の強いキイロスズメバチで、このスズメバチは生ゴミを漁ったり、飲み残しのジュースの空き缶に集まったりと、本来の肉食以外にさまざまな食糧を調達するそうです。このあたりは都市部で悪名高いハシブトガラスにそっくりですね。
 都会では公園の整備や緑化事業が成功して、いまではあちこちにグリーンベルトが定着しました。その緑のおかげで、さまざまな虫や鳥たちがもどってきてちょっとした都市型生態系ができあがっています。先月のセミにかぎらず、意外にも都会の昆虫相は厚いのです。その理想的な環境に入り込んできたのが前述のスズメバチです。
 コガタスズメバチやキイロスズメバチの天敵は里山に棲むオオスズメバチですが、オオスズメバチはさすがにこの程度の環境改善では都市部に進出できなかったようで、つまり天敵のいないキイロスズメバチが今のところ都会の生態系の頂点に君臨しているというわけです。
 さて、このキイロスズメバチは人家の軒下などにも平気で巣作りをします。屋根の隙間や雨戸の戸袋に営巣していて、気がつかずに巣を刺激した家人が刺される事故が相次いでいます。今までは郊外の住宅地に被害が集中していますが、このさき都心部でもスズメバチに刺される事故が起きるかもしれません。
 この夏は冷夏で、スズメバチの巣も例年になく小さいそうです。そのため、思うように活動できなかったスズメバチはストレスがたまって凶暴になっているというのです。都心とはいえ、スズメバチを見かけたら注意するに越したことはありません。うっかり巣に近づいたら危険です。
 ハチ毒は数種類あって、一度刺されると免疫ができますが、その後、同じ毒には過剰反応のアレルギーを起こすことがあります。これがアレルギー性ショックで、死亡事故の原因にもなります。
 ハチ類は殺虫剤に弱いので、家屋に侵入したハチは家庭用のスプレー式殺虫剤でなんとかなるようですが、近所に巣を見つけたら業者に連絡して取り除いてもらうのが賢明ですよ。


イトヒロ:少年時代の穴蝉とり名人にして東南アジアバックパッカー経由、草野球迷三塁手のイラストレーター。著作に「不思議の国の昆虫図鑑」(凱風社)、「草野球超非公式マニュアル」(メタ・ブレーン)、「旅の虫眼鏡」(旅行人)など。雑誌「子供の科学」に「イトヒロのご近所探検隊」連載中。

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◎第1回「タヌキ」◎第2回「アブラゼミ」◎第3回「スズメバチ」◎第4回「アオマツムシ」◎第5回「クマネズミ」◎第6回「ワカケホンセイインコ」◎第7回「チカイエカ」◎第8回「ヒヨドリ」◎第9回「メジロ」◎第10回「モンシロチョウ」◎第11回「アカミミガメ」◎第12回「ヒキガエル」◎第13回「アオスジアゲハ」◎第14回「ハシブトガラス」◎第15回「セイタカアワダチソウ」イトヒロの訃報に寄せて

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